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初夢を思わせる“口福”なお菓子「京奈寿結(きょうなすび)」
うっすらと粉雪のような砂糖を纏った上品な小茄子のお菓子。透明感のある淡い緑の果肉が目にも鮮やかです。

うっすらと粉雪のような砂糖を纏った上品な小茄子のお菓子。透明感のある淡い緑の果肉が目にも鮮やかです。

 お正月の初夢に見ると縁起がいい「一富士・二鷹・三なすび」。由来は諸説ありますが、富士は不死と重なり、しかも裾広がりで今や世界遺産です。鷹は、高い空を上昇するので機運が良く、茄子は花が咲くと必ず実を結ぶので子孫繁栄を意味し、「ことを成す」に通じることから、新年の縁起物にはぴったり。

 ここ京都には、そんな縁起の良さに重ねた茄子の和菓子があります。それは、みずみずしい小茄子を丸ごと砂糖漬けにした「京奈寿結」。その名に当てられた漢字からもわかるように、新年のはじまりに、背中を押してくれるような京菓子です。

 京奈寿結を作っているのは、西賀茂にある「お菓子司霜月(そうげつ)」の水田良明さん。創業以来、京の季節の移ろいを和菓子にたくし、京の通人たちを魅了してきました。

 「京奈寿結の仕込みは夏から始まります。使うのは7月、8月に採れる、つややかでみずみずしい小茄子。いつも自分で買いつけに行きます。作柄が天候で左右されやすい繊細な野菜なので、良い茄子ができるタイミングを注意深く計っているんですよ」と水田さん。

 丁寧に皮をむかれた茄子は、砂糖と共に釜に入れて煮られ、低めの糖度で繰り返し煮ること3度。数カ月寝かせた後、糖度を高めてじっくりと煮詰め、乾燥させて出来上がる手の込みようです。すべてが手作業なので、決して大量生産に向くお菓子ではありませんが、だからこそ作り手のこだわりを反映した逸品に。

 毎年心待ちにしている方も多く、販売は12月の中旬以降ですが、秋には予約が入りはじめ、予約分だけで大半がなくなってしまうそうです。

 一度口にすると、やわらかな甘みが茄子の味わいを忘れさせてしまう奥ゆかしい味わい。京奈寿結は、縁起だけでなく、“口福”も運んでくれるお菓子でした。

店先に用意されたショーケース。名物の山椒餅をはじめ、濃厚な味わいの蓬餅(よもぎもち)、昔ながらの製法のきんつばなどが並びます。 店名は、創業が11月3日であることと、水田さんご夫妻の誕生日がそろって11月だということに由来しています。
Information
御菓子司 霜月
京都市北区西賀茂榿ノ木町5
TEL075(491)5556
 

御菓子司 霜月 水田良明さん

御菓子司 霜月 水田良明さん

「素材は自分の目で確かめて仕入れ、自分自身が納得できる丁寧な手作業でお菓子に仕上げます。大量生産ではお届けできない良さを、守っていきたいですね」。



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